悲しみが大きければ大きいほど、それは凍結する。
いっぺんに感じたら、自分が壊れてしまうから。
凍結しているときは、あんまり感じないし、その存在にすら気がつかない。
だんだん普通に戻って、だんだん平和で安心になっていくときに、その凍りは少しづつ、溶けていく。
その溶け方は様々だから、1年後に溶ける場合もあるし、3年後、5年後、10年後、15年後もある。
20年後だってあるし、もっと先もある。
だから、「時が経ったから、もう悲しくない」ってことが全部じゃない。
すっかり忘れていたある日、その凍りが溶けるとき。
あのとき凍った思いが、感情が、染み出してくる。
あまりに意外で、動転するかもしれない。
無かったことにしようとするかもしれない。
でも、もうそこで無視はできない。しないほうがいい。
その思い、感情を自分で受け止めて、ちゃんと感じるべきときが来たのだ。
その作業は少し痛く、つらいかもしれない。
でもそうしないと、その悲しみの凍りはなくならないから。
そうしてあげると、悲しみの凍りは蒸発して、こころのなかに、優しさの種が蒔かれるよ。
そのうち芽が出てきて、大きくなって、やがて、花が咲くのが見えるよ。