先月から訪問している患者さん、嚥下障害による肺炎の入院から退院されてきた、という話を聞いたので、嚥下障害に関する鍼灸の研究報告がないかな?と思っていたところ・・・Twitterで発見。
#臨床研究
— 鍼灸文献デジタルアーカイブ (@89_archives) 2021年8月13日
「嚥下障害に対する鍼治療」
菊地 章子, 金子 聡一郎, 高山 真
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 2018年
ℹ️ J-STAGE
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原文はこちら→
過去東北大学で行われた研究報告の紹介記事、ですかね。
2003年4月発表の研究によると、
脳血管障害と誤嚥の既往がある高齢者(41人)に対して下肢の2つの経穴(膝下の足三里穴および内果後方の太渓穴)に、鍼(セイリン社製,セイリンディスポJタイプ1番,直径0.16mm,長さ40mm)を10mm の深さで刺し15分間置いたところ、嚥下反射潜時(latent time of swallowing re- flex:LTSR)が改善した。また、その効果は1回の鍼刺激後7日間持続した。
また、
嚥下造影を用いた研究(2005年3月発表の研究報告)では、脳血管障害と誤嚥の既往がある高齢者(32人:女性20+男性12のうち、18人:女性10+男性8)に鍼治療として足三里と太渓への鍼刺激を1回15分、週3回、4週間施行した。残りの14人:女性10+男性4は鍼なしで通常ケア。
水・流動食・固形食による嚥下造影検査を介入前後で施行したところ、咽頭における食物残留量が有意に減少し、誤嚥は認められなくなった。 また、水と流動食を嚥下するのに要する時間が有意に短縮した。
嚥下反射とは少し離れるが、足三里と太渓に腰部の経穴である腎兪への鍼刺激を加えることで、歩行障害患者の歩行機能およびADLの改善が認められることも報告している。
足三里と太渓は、筑波大学等の研究報告でも用いられていました。大学が独自に開発した頚部装着型嚥下機能計測機器を用いて嚥下音を解析した研究でも、嚥下機能に対する鍼治療の有用性が示唆されています。
円皮鍼(パイオネックス)と針のついていないプラセボ鍼の二重盲検比較試験も行われていました(2014年12月)。
65歳以上の脳血管障害をもつ症例(29人:女性19+男性10)を、group 1(10人):経穴(足三里・太渓)に円皮鍼を貼付する群、group 2(10人):経穴にプラセボ鍼を貼付する群、group 3(9人):経穴ではない部位に円皮鍼を貼付する群に無作為に振り分けた。円皮鍼・プラセボ鍼を4週間連日貼り替えたところ、介入前後のLTSRはgroup 1で有意に改善した(6.9±2.3 vs 2.5±0.3秒,p=0.005)。group 2, 3では有意な変化は認めなかった。group 1のLTSRの変化量はgroup 2とは有意に 差があったが(p=0.008)、group 3とは差がなかった(p>0.99)。以上のことから、円皮鍼の貼付により脳血管障害をもつ高齢者の嚥下反射が改善することが示唆された。
上記については、症例数が少なく観察期間が短い、また脳血管障害以外の嚥下障害への有用性などさらなる研究が必要、とのこと。
誤嚥が起こる原因の一つに、嚥下反射・咳反射の低下があります。
この2つの反射が正しく機能するには、(略)サブスタンスPが、咽頭や気管内組織の末梢神経において一定に保たれていることが必要です。そのサブスタンスPは、黒質線条体で合成されるドパミンにより、その合成が促進されることがわかっています。脳血管障害などで黒質線条体を含む深部皮質に障害が起こると、ドパミンの合成能も低下し、それが嚥下機能の低下を引き起こすとされています。
頚部の鍼通電刺激により、嚥下機能改善や孤束核における5-HT1Aを発現することは確認されていますが、黒質線条体におけるドパミンの合成についての調査研究はまだ見当たりません。
ですが、いくつかの研究から、鍼刺激がドパミン合成に影響し嚥下障害を改善する可能性が期待されます。
ラットに対する研究ではありますが、脳血流の改善効果や梗塞直後の脳梗塞の縮小効果など鍼刺激脳血管障害に関連する報告や、同じ黒質線条体の問題であるパーキンソン病モデルラットを用いた研究で、鍼刺激がドパミンを合成する黒質線条体の細胞死を予防する報告が出ています。
嚥下機能に有用と考えられる経穴も紹介されていました。
嚥下障害の東洋医学的分類のパターンが大きく分けて3つ。
- 体力はあるが何かが邪魔をして嚥下できない状態:現代医学的には「頚部外傷および頚部腫瘍」に相当。この場合、問題が起きている局所近辺を選択します。最近の報告で用いられている廉泉(CV23)と風府(GV16)が相当。
- 体力はあるが嚥下する力が発揮できない状態:現代医学的には「脳損傷および神経筋疾患」に相当。この場合「筋」に対するアプローチとして、太衝(LI3)と陽陵泉(GB34)が挙げられます。これらの経穴はパーキンソン病モデルラットの研究で使われていました。
- 体力の低下や加齢により嚥下する力が弱い状態:現代医学的には「高齢者における)脳血管障害」に相当。体力の低下などを有する際に用いるものとして、太渓 (KI3)と足三里(ST36)が挙げられます。
海外では、嚥下障害を改善させる方法の一つとして、鍼灸の有用性が報告されているようですね。
2021年3月に、中国から、脳卒中後の嚥下障害に対する鍼治療のシステマティックレビューおよびメタアナリシスが出ていました。ここでも、嚥下障害患者の嚥下機能が鍼治療によって大幅に改善すると結ばれていました。
Conclusions: The existing evidence supports that acupuncture therapy can significantly improve the swallowing function of patients with dysphagia.
やはり中国はパイがでかいので症例数も半端なく多いから、研究にも最適な環境と言えますね。
引き続き、面白そうな研究・論文がありましたら、紹介していきます!・・・という意欲は持っています^^;
注:引用部分のピンク色イタリック体部分は、引用者が追加しました。
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