COVID-19漢方治療の考え方が日本感染症学会HPに掲載

金沢大学附属病院漢方医学科診察科長、小川恵子医師が書かれた「COVID-19感染症に対する漢方治療の考え方」（特別寄稿）が、3月19日付で日本感染症学会のサイトに掲載されていました。
追記：4月22日に改訂Ver.2がリリース

日本のドクターがCOVID-19治療の漢方医学的・中医学的な知見について書かれた貴重な情報です。

臨床的にみて最も大きな違いは、中国では生薬を組み合わせて煎じ薬を新たに創るのに対し、日本では保険診療で認可された、固定した処方のエキス製剤を使うことが多いことです。そのため、小川先生はエキス製剤情報も併せてご紹介されていますので、とても参考になりそうです。

www.kansensho.or.jp

全容は↑のリンクをご覧いただきたいのですが、主要な所を抜粋いたします。

予防

免疫システムを活性化する漢方薬を2つ推奨されています。これらは、無症状病原体保有者の病原体陰性化の促進も期待できる、とのこと。

● 補中益気湯

【第2類医薬品】ツムラ漢方補中益気湯エキス顆粒 48包

発売日: 2018/03/01
メディア: ヘルスケア&ケア用品

● 十全大補湯

【第2類医薬品】十全大補湯エキス錠クラシエ 180錠

メディア: ヘルスケア&ケア用品

清肺排毒湯

これは治療薬ですので、患者向けです。
清肺排毒湯のエキス剤はありません。麻杏甘石湯＋胃苓湯＋小柴胡湯加桔梗石膏を一緒に服用することで、同様なものを作ることができます。

【第2類医薬品】ツムラ漢方麻杏甘石湯エキス顆粒 20包

発売日: 2018/03/01
メディア: ヘルスケア&ケア用品

【第2類医薬品】胃苓湯エキス錠クラシエ 36錠

メディア: ヘルスケア&ケア用品

軽症型

「症状が軽く、画像で肺炎症状が出ていない。」という定義で、倦怠感が主体。

胃腸の不調を伴う場合：藿香正気散(かっこうしょうきさん) のエキス製剤にはありませんが、香蘇散＋平胃散を一緒に服用することで代用できます。
発熱を伴う場合：金花清感顆粒、連花清瘟 (顆粒)、疏風解毒膠嚢(顆粒) の代用エキス製剤としては、黄連解毒湯、もしくは清上防風湯、もしくは荊芥連翹湯、もしくはこれらの組み合わせをお勧めされています。
悪寒を伴う場合：日本漢方の考え方で、中国では日本ほど葛根湯などの麻黄剤が感染初期には用いられないようですが、寒湿邪による病態と考えると、下記が日本人の病態にはあっていると思われます。
エキス剤：
通常は健康な成人や小児　葛根湯もしくは麻黄湯。高齢者や倦怠感が強い患者は麻黄附子細辛湯。

普通型の軽症

寒湿鬱肺
臨床症状：発熱、倦怠感、筋肉痛、咳嗽、痰、胸の不快感、消化不良、食欲不振、吐気、嘔吐、排便の不快感。舌質は淡紅(ほぼ正常な色)、腫大歯痕があり、苔は白厚膩(厚くぺンキを塗ったような苔)。
エキス剤の場合：麻杏甘石湯＋参蘇飲＋平胃散を一緒に服用。消化器症状が無いか軽度ならば、越婢加朮湯＋麻黄湯を一緒に服用。
湿熱蘊肺
臨床症状：微熱あるいは無熱、微冷感、倦怠感、頭が重い、筋肉痛、渇いた咳、痰少なく、喉の痛み、口の渇き、胸の不快、無汗か汗が出づらい、吐き気、食欲不振、食欲不良、便が緩くもしくは粘りがあり出にくく不快感を伴う。舌は淡紅、舌苔は白厚膩または薄黄。脈は滑数または濡。
エキス剤の場合：荊芥連翹湯＋半夏厚朴湯を一緒に服用。消化器症状が強ければ、柴苓湯＋平胃散を一緒に服用。

重症のケースについても、生薬煎じ薬の代用エキス剤が紹介されています。
ご興味がありましたら、原文をご覧ください。

中西医結合治療（中医学と現代医学治療の併用）と現代医学治療のみの比較が出ていました。

2020年1月15日〜2020年2月8日湖北省中西医結合病院を退院した52例の新型コロナ肺炎患者の診療録を基に、中西医結合治療組（中西医組）(34例)と現代医学治療組（西医組）(18 例)を比較しました。主な症状は発熱75%、全身倦怠感61.5%、咳嗽50%。普通型76.9%、重症患者19.2%、重篤患者3.8%でした。

中西医結合群退院時の随伴症状消失率 87.9%、CT 画像改善率 88.2%、臨床完治率 94.1%及び普通型から重症型に悪化する率 5.9%も西洋医群よりも有意に高かった(西洋医群は 53.8%,68.8%,61.1%,33.3%) (P<0.05 または P<0.01)。これらの結果から、中西医結合でコロナ肺炎を治療する時は患者の症状を顕著に軽減し、病程を短縮し、完治率を高めできると推測しています。

（太字引用者）

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