世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)
- 作者: 山口周
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2017/07/19
- メディア: 新書
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本書は「ビジネス書」の類なのでしょうが、そうと呼ぶにはあまりにもったいない!
「ビジネスなんて関係ない」って方にもおすすめです。
副題に入っている「アート」と「サイエンス」。
「それらの融合が大事だ」って、よく聞こえてくるメッセージですが、じゃあ実際「それってなんなの?」「どうしたらできるの?」という問いに、はっきりくっきり、いわゆる万人がわかるような「答え」は見つかりません。
「分析」「論理」「理性」が重要視されている経営の世界で、「美意識」が大事だという。
その証拠に、ここ数年グローバル企業はエグゼクティブたちをアートスクールや美術系大学に送りこんでいて、彼らは極めて「功利的」な目的のために「美意識」を鍛えている
、という。
「功利的」と「美意識」、一見真逆のベクトルのようですが。
今の世界はVUCA(Volatility=不安定、Uncertainty=不確実、Complexity=複雑、Ambiguity=曖昧)なので、分析・論理・理性重視の「サイエンス」が通用しないことがままあります。
この、サイエンスが通用しない領域に力を発揮するのが、「美意識」「アート」だという訳です。
著者は、MBA教育批判をされたヘンリー・ミンツバーグという経営学者の主張を引用しつつ、意思決定のクオリティは「アート」「サイエンス」「クラフト」の三つの要素のバランスと組み合わせ方によって大きく変わる
、と強調されています。
「アート」は創造性、直感、感性など抽象的概念で、そこからワクワクするようなビジョンを生み出します。
「サイエンス」は、そのビジョンを体系的に分析、評価し、現実的な裏付けを与えます。
「クラフト」は、経験や知識を元に、ビジョンを現実化するための実行力を生み出していきます。
これら三要素に優劣はなく、どれも必要です。
が、現在のビジネスでは、アカウンタビリティ(「なぜそのようにしたのか?」という理由を、後でちゃんと説明できること)が求められています。
そうなると「アート」に勝ち目はなく、必然的に「サイエンス」と「クラフト」に偏っているのが現状です。
これってビジネスに限った事ではないですね。
「何を選択するか?」「何をやるか?」といった個人の決定・行動基準に当てはめて考えてみると、自分の傾向がわかって面白いです。どの要素主導でしょうか?使っていない要素はあったでしょうか?
私個人を振り返ってみると、20代〜30代半ばまでは「サイエンス」重視だったかも。何かやるにしても、「これをやったら何に役立つか?」基準でした。周りにその理由を説明ができるか?っていうことを結構氣にしていました(無意識だけど)。
ある出来事をきっかけに、「何になるかわからなくても、とにかく、興味が引かれたものはやってみよう。」と決心したことを覚えています。
ま、こういうのは厳密なものではなく、そう決心する前でも「アート」を使ってはいたと思うんですが、「アート」より「サイエンス」重視、裏付けがないものはやる意味がない、と思っていました。
若かったのに、頭コチコチでしたね〜、今思えば。
あと、「アート」の抽象的概念を表現する術がわからなかった、というのもあります。周囲にそういう概念をシェアできる相手がいなかった(と決めつけていた)というのもあります。「アート」を芸術的才能のみと理解していて、苦手意識があったので、遠ざけていたというのもあります。
アロマセラピー(トリートメント)を勉強していたとき、海外のセラピストたちはよく「マッサージはアートだ」と言っていました。
もちろん、解剖学や生理学、人体の構造も大事なのですが、セッションするときは「頭」はおいておく、「考えながらやるな」「感じろ!」っていうことを言う方が多かったですね。
まさしく「アート」主導です。
「アート」「サイエンス」「クラフト」の三要素、鍼にも当てはまります。
鍼をうつとき、これらのバランスがほんとに大事だな〜と、ひしひし感じています。
「アート」だけだと独り善がりの鍼になり、「サイエンス」「クラフト」だけだと一人ひとりの独自性を見落とし、いのちの多様性に対応できません。
そして、尊敬する先生方はみなさん、鍼をうつ姿が美しいのです。
鍼をうつ姿を見ているだけで、私の中の氣がすーっと通ります。
不思議ですね〜。
あ!でも当然なのかもしれません。
マザー・テレサが言っていました「私たちが心穏やかに、平穏無事に毎日を送ること。それが「世界平和」への貢献になる。」
一人のひとの氣が整い巡っている、状態は、氣がつくつかないに関わらず、周りの氣にも影響を与えているのかもしれません。
横道外れました・・・
鍼に限らず、そこに「アート」がないと、魂がない「抜け殻」に過ぎず。
数年前、文部科学省が全国の国立大学に対し、教員養成系学部や人文社会科学系学部の廃止や組織改編を求める通知を出したことがありました。
これは「社会的要請を踏まえた改革」という意図によるものだったそうなので、私たちの「アート」に対する一般認識がこの程度ってことなのでしょう。
この本が出版されたのが2017年なので、今は変わりつつある、と期待を込めて・・・
みなさん、「美意識」を鍛えましょう!
人生は面白い。
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