『あなたの体は9割が細菌』、読みました。
原題は『10% Human』。「あなたの体のうち、ヒトの部分は10%しかない。」ということだ。
自分のからだと思っているが、実は、たくさんの微生物たちが一緒に住み着いていて、私たちの健康状態や精神状態が、想像以上に彼らによって左右されている・・・って聞いたらどう思われますか?
キモチ悪い? そのとおり!? いやいや、ありえないでしょ?
私は、なぜか嬉しく感じました。「人体は小宇宙である」と言われますが、まさしくこの考えを裏付けするような事実!
一人一人が一つの星みたいに思える。みんなそれぞれ生態系が違うから、そこに住んでいる微生物も種々様々。
そして、健康なヒトの腸内微生物(マイクロバイオータ)は多様性があるそうです。その人は、体内に豊かな自然を持っているわけですね〜。
この本では、いろいろな疾患がマイクロバイオータの問題ではないかという事実を、丁寧に取材され検証され、書かれています。例えば、肥満、うつ病、アレルギー、自閉症、etc.
まだこの分野の研究は始まったばかりではありますが、「あらゆる病気は腸からはじまる」というのは千島学説にも通じるところがあり、興味津々です。
やはり、抗生物質の使いすぎには注意必要ですね。かと言って、抗生物質が悪者というわけではありませんが。
抗生物質がマイクロバイオータの環境を破壊することは間違いないようです。
厄介なのは、抗生物質が使われているのはヒトだけではないってところ。ご存知のように、家畜には大量の抗生物質が使われています。
驚いたのは、食肉用の家畜を太らせるために抗生物質が使われていた、ということ。
「1940年代後期、アメリカの科学者は思いがけず、ニワトリに抗生物質を与えると成長が50%近く促進されることを見出した。」そうです。当時、アメリカでは都市人口が増加し、生活費の高さに困っていた市民たちの欲しいものの上位に、「安価な食肉」が挙げられました。
そんな時代に、この発見!そりゃ、抗生物質が夢の薬になりますよね〜
肥満の人と痩せ型の人、腸内微生物が違うそうです。同じカロリーのものを食べても、微生物の違いが吸収率の違いを生むそうです。
そこで出てくる、「腸内微生物を移せばいいのでは?」という疑問。そうあります、糞便移植という治療法!!
本中には、実際の治療として糞便移植を取り入れて治癒した例も紹介されています。重篤なクロストリジウム・ディフィシル感染症患者だったアメリカ人女性、ペギー・カン・ハイの話。オーストラリアで、下痢型の過敏性腸症候群とクロストリジウム・ディフィシル感染症の治療法として糞便移植を取り入れているポロディ教授の話など。
日本ではどうなのかとググってみたところ、慶應IBDセンター、順天堂、千葉大、藤田保健衛生大学病院など出てきました。
微生物移植ということでは、出産・母乳も大きな役割を果たします。「変えなければならないのは、(略)出産を医療対象とみなす風土すべて」という一言につきます。赤ん坊が母親の膣を通って生まれてくることも、「肛門が膣口のすぐそばに」あって「陣痛中や出産時にほとんどの女性が排便する。」ことも、「幸先のいいスタート」。「母から子への最初の贈り物」、微生物が無事に届けられ、これから生きていく赤ん坊を守ってくれるわけです。
世の中、抗菌・殺菌グッズが溢れかえり、菌がないことが良いという風潮がありますが。。。その行為が、すでにある自然の生態系を壊していることに氣がついていません。
私もひところに比べると、抗菌グッズの使用はだいぶ減りましたが、ゼロではないですね…
これからは、私の中の微生物のことをもっと考えて、彼らが喜ぶ生活をしていこうっと。
人生は面白い。